可動式医療機器のサプライヤーUS Med-Equipは、買掛金に関する機械学習モデルを再利用して、看護師が EMR システム上でワンクリックで病院のベッドをレンタルできるようにした。
US Med-Equip のアントニオ・マリン氏と彼の IT チームは、複数の病院や医療システムの看護師たちに、彼らが長い間切望していたものを与えた。それは、レンタル用病院のベッドを簡単に、そして効率的に注文できるシンプルなソリューションである。
病院用ベッドをレンタルできることで、医療従事者は患者ケアにおいて柔軟性と拡張性を高めることができるが、レンタルベッドの注文プロセスが理想的でない場合、こうした利点が失われてしまう可能性がある。
ベッドや治療用サポート面を含むさまざまな可動式医療機器のレンタル、販売、サービスを手掛けるヒューストンに拠点を置く US Med-Equip は、既存の機械学習モデルを支払勘定から再トレーニングし、Microsoft コードとロボティック・プロセス・オートメーション（RPA）を追加することで、病院用ベッドをワンクリックで注文できるソリューションを開発した。
2022年よりCIOを務めるマリン氏は、マイクロソフトのパートナーであるResolute Consulting社と共同で、2か月間で開発したクラウドソリューションであるこのプロジェクトに取り組んだ。このソリューション「GoUSME Connect」の主な利点の1つは、数日間ではなく数時間で、すべての主要な電子医療記録（EMR）システムと統合できることだ。
「看護師たちと話していると、ベッドをレンタルして請求システムと照合するのは非常に複雑で時間のかかる作業だとわかる。彼らはワンボタンで操作できるソリューションを求めていた」と、RPAベンダーUiPathのCIOのコンサルタントを務めていたこともあるマリン氏は言う。
US Med-Equip が 2024 CIO Award 100 の IT リーダーシップとイノベーション部門で受賞した GoUSME Connect は、2023年10月からプリズマ・ヘルスとコロラド大学の看護師とスタッフが使用できるようになった。サウスカロライナ州グリーンビルメモリアル病院のプリズマ・ヘルスが GoUSME Connect を最初に導入した病院であり、その後16の病院がそれに続いたとマリン氏は説明する。
全米に93の拠点を置くUS Med-Equipは、患者向けのレンタルベッドをより効率的に提供できるようになった。レンタル可能なベッドには、救急治療室に搬送される歩行可能な患者向けの空気ベッドなど、さまざまな種類がある。
「ベッドを届けるのに最大 45 分かかることもありました」とマリン氏は述べ、救命処置では 1 分 1 秒が命取りであることを指摘する。 「看護師がボタンを押してから、カスタマーサービスの担当者が注文を受け取り準備ができるまでの間に、ヒューマンインターフェースがないため、30 分以内に届けることができました」
このソリューションは、電子ファックスにロボットによるプロセス自動化と機械学習を組み合わせたものである。eFax、MicrosoftのPower Automate RPA、Power AI OCRツール、再訓練されたMicrosoft Azureベースの機械学習モデルで構成されており、関連文書を処理する。 (マリン氏はドイツで同様のAI OCRツールを見つけたが、HIPAA規制により米国での使用は制限されている。)
「これは完全に自動化されており、4つの要素がプロセス全体を円滑に進めるのに役立った」とマリン氏は語る。元々は買掛金アプリケーション用に開発された機械学習モデルの再トレーニングには約12回の試行が必要だったという。 「私たちは、元々は別の用途を想定して作成された機械学習モデルを使用しているが、自社のニーズに合わせて再活用している。これをAI OCRと組み合わせることで、当社のソリューションの『秘密のソース』となっている」
医療の変革を支援する
マリン氏によると、医療システムは長年にわたってこのようなソリューションを探してきたが、提案が高額で独自仕様のシステムインテグレーターを雇うしかなかったという。このソリューションにより、臨床医はレンタルを注文するために別のシステムを使用したり、新しいプロセスを学んだりする必要がなくなった。
GoUSME Connectソリューションは、患者ケアの向上だけでなく、US Med-Equipのレンタル事業拡大にも貢献している。現在、統合に向けたパイプラインには、モントレー半島地域病院、ノースメモリアルヘルス、カイザー・パーマネンテの病院1つ、メソジストヘルスシステム、そして「調査段階」にある数件が含まれているとマリン氏は説明する。
US Med-Equipは、酸素ボンベなど他の種類の医療機器にもサービスを拡大する予定だが、顧客は病院用ベッドから始めたいと希望した。病院用ベッドは、病室のレンタル料に関して「最も費用がかかる」ものの1つであるためだ、と同氏は指摘する。
アナリストによると、GoUSME Connectのようなシステムに対する需要は強い。2023年5月に実施されたIDC Industry CloudPath Surveyによると、医療提供者はデジタル変革を支援するためにクラウドサービスを導入しており（28%）、サイバーセキュリティ対応の改善（29%）に次いで2番目に多い。
「業務効率の向上とコスト削減、そして医療の質と患者体験の向上は、医療提供者が目指す大きな目標である」と、IDCの公共部門担当グループバイスプレジデント、リン・ダンブラック氏は言う。「医療機器の注文プロセスを加速化するクラウドベースのソリューションは、医療企業全体で使用する医療機器の幅広い種類と台数を考えると、医療組織にとって魅力的である。これらの重要な資産は、管理、追跡、メンテナンスを行い、最も必要とされるときに使用できるようにしておく必要がある。そうすることで、質の高い患者ケアを提供することができるのだ。
US Med-Equip のマリン氏は、このソリューションは患者、病院スタッフ、そして彼のビジネスにとって三者三様の利益をもたらすものであり、クラウドがなければ実現できなかったと語る。医療システムが患者を最も効率的に治療し退院させるのを支援するだけでなく、看護師や臨床医はサービスプロバイダーからのすべての請求書が記載されたレポートを受け取る。以前は、スタッフは各患者と請求書を毎月手作業で照合し、帳簿を照合しなければならなかった。そのため、医療用ベッドのレンタルは面倒で、看護師が社内でより簡単な解決策を探す必要があった。
「第一に、顧客を定着させることができる」とCIOは言う。そのシンプルさと強力なサイバーセキュリティが自社のビジネスの成長につながるという。 「病院や大学のAPIがハッキングされたという話を耳にする。これはハッキング不可能であり、最悪の場合、数百万件の記録ではなく、レンタルしたデータを失うことになるだけだ」
今のところ、US Med-Equip は、マリン氏が「基本的なプロセス自動化」と表現する同社の革新的なテクノロジーのライセンス供与の予定はない。これは「入門レベルの AI、OCR、機械学習」であり、「当社が持つ差別化要因のひとつであり、顧客に無料で提供できるものです」とマリン氏は言う。同社のサービスを利用すれば、病院を数日でオンライン化できることも大きなセールスポイントだ。
「私たちはそれを簡単にしました。看護師は事務処理のためにレンタルを望まず、患者を病院の空いているベッドに寝かせていました。今では、事務処理なしで患者に良いベッドを提供できるようになりました」とマリン氏は語る。
